毎日料理をしていると、料理は特別なことではないと気が付く。人間は食べなければ生きてゆけないし、どんなに心が元気がなくても、食事を摂るだけで何となく元気が出てくるものだ。免疫力を高めるのも食だし、昔から医食同源ともいうし、人間は自分が体の中に摂り入れるものでできているのだから、食は大事なこと。でも料理は特別なことではない。
料理が得意という人は、愛する人、愛する家族の笑顔が見たいと思って、あるいは、彼らの元気を作る一端を担いたいと思って、得意になっていくものなのではないかなと思う。よく、シングルファーザーになった男性が、それまで包丁ひとつ握ったことがなかったのに、子供を元気にするため、子供に食べさせていくため、子供のお弁当を作るため、そういう理由で料理がすこぶる得意になる、という話を聞くことがある。結局、人間の根底に流れる原動力は、常に愛なんだよね、と思う。自分のためには料理はできない、という人もたくさんいるし、私もそれを実感する。自分のためだったら、別にコンビニ弁当でもいいと思ってしまう。日本人だから、毎日お茶漬けサラサラでも十分だと思うし。でもそれでは、愛する家族の健康は守れないから、今日も台所に立つ。
ずいぶんと寒くなってきたから、今日は真鯛のアラを使って潮汁を作った。前日に真鯛のアクアパッツアを作ったときに残しておいた真鯛のアラ。食材の使わないところはほとんどない、というぐらい、我が家では食材を一切無駄にはしない。

用意するのは
- 真鯛のアラ 1匹分
- 和出汁(合わせだし) 500㏄ぐらい
- 長ネギ 1本
- 椎茸 1枚
- 日本酒 100㏄
- 生姜 少々
大体これで2人分か3人分。
真鯛のアラは、下準備が大事。よく洗って、血合いを取り除き、粗塩(分量外)と日本酒(分量外)を振りかけておく。できればこの状態でひと晩冷蔵庫に入れておく。
大事なのはお出汁。うちは常に2リットルぐらい昆布とマグロ節の合わせ出汁を取ってストックしてあるので、日本食であればどんな料理でもこれを使う。2リットル作っても、大体3日で使い果たすので、3日に1度は合わせ出汁を取っていることになる。

フライパンでもいいのだけれど、我が家ではオーブントースターの方が楽なので、そうしている。キッチンペーパーの上に真鯛のアラと長ネギを並べて、220度で表面5分、裏面5分焼く。中まで火は通ってなくてもいい。真鯛は生臭さをとるために、一度焼く。
鍋に3の真鯛のアラと長ネギ、ひと口大に切った椎茸を入れて和出汁と日本酒、刻んだしょうがを入れて少しだけ煮る。長ネギがくたってしたら、火を止めて、味見をし、足りないようだたら少しだけ塩を入れる。

今年の冬はとても寒い。体が温まるものを食卓に並べたいと思う。潮汁は魚のうまみと生姜のさわやかさがマッチしてシンプルながら、じんわりと体にしみこんでいく感じがする。大事なのは魚の下処理と出汁。日本の出汁は最強だとつくづく思う。昆布とマグロ節、昆布と鰹節、昆布のグルタミン酸が味噌汁でも煮物でも、味に深みを与える。調べてみるとグルタミン酸は、私たちが生きていくうえで、とても重要な役割を果たしているのだそうだ。グルタミン酸には、疲労回復の効果や記憶力が学習能力を高める力があるそうだし、何よりこのうま味は言葉では表現できないほどの、美味しさだ。うま味は第5番目の味として、知られているらしい。
食が体を作り、心を作り、頭脳を作る。そんな気がする。
