母は生まれつき側弯症があり、20代のころから腰に痛みを抱えています。しかし若い頃は無理もできるもので、当時はハイピール、しかもピンヒールが大流行で、30代、40代と母は必ずヒールの靴を履いていました。
体がヒールに合った体形になってしまったのか、スニーカーを履くと、むしろ怖い、と言っていた時期もあって、今考えれば随分と体にとっては無理な姿勢を続けていたのだと思います。
最近になって、ヒールの靴を一切やめて、スニーカーだけで過ごすようになりましたが、生まれつきの側弯症と長年の姿勢の悪さ、歩き方、そして加齢で、腰部脊柱管狭窄症になりました。というよりも進行した、という感じです。
足のしびれや、冷えを訴えるようになり、徐々に徐々にひどくなってきたように思います。毎日続く痺れは、ほぼ拷問に近いはずです。24時間止まることのない痺れですから、本人は不快で仕方がないと思うのです。
最初は原因がわからずに、脳神経科に行ったり、内科で胃や大腸を見てもらったり、いろいろしましたが、結局原因はわからず。症状をgoogle先生に打ち込んで、それが腰部脊柱管狭窄症なのではないか、と思い、以前に受診したことのある総合病院へ行きました。そこの整形外科の先生は、脊椎の専門医ということで、脊椎学会にも登録のある医師です。
予約をして受診をすると、すぐに検査に回してくれるわけでもなく、「お薬を処方しますから、飲んでみてください」と言われました。私はその対応にひどく疑問を抱き、自分が調べつくした資料のすべてを見せ、ノートに書き写した症状と腰部脊柱管狭窄症の典型的症状と合致することを説明し、「母は狭窄ではないのでしょうか?」と疑問をぶつけました。すると急に「その可能性もあります。じゃぁ、MRIを取りましょう。」と言い出したのです。え、私が言い出さなかったら、検査もしなかったの?
母が何度も痛い、辛いと訴え、何とかしてほしいと言っているのにもかかわらず、さらりと薬で済ませようとした態度に、私は家族として、強烈な怒りを感じました。しかしそこで怒っても仕方がありません。MRIの予約も3週間以上も先で、本当に医者は患者の辛さなどわかっていないのだ、と実感しました。
結局、痛みはひどくなる一方だし、痺れも日々ひどくなるようなので、近くのクリニックで、電気をあててっもらったり、ストレッチを教えてもらって1日3回のストレッチをしたりしながら、MRIまでの時間を過ごしていました。そしてようやくMRIを受け、診断は腰部脊柱管狭窄症。そう、私が言い出さなかったら検査もしなかった病名を言われました。4番、5番の神経の圧迫。
そして通っていた近くのクリニックへお手紙を書いてもらい、データをいただくことになりました。なぜならば、「けん引してください」と言われたからです。理学療法だけで良くなるんだろうか、、、疑問に思いながら翌日にクリニックに。そうすると、今度はクリニックの先生が、私の不安をさらにあおることを言い出しました。
まず、データを見ているのにもかかわらず、その医者は「どこが狭窄なんですかね。」と、、、え、お手紙に書いてないの?
仕方がないので、私が総合病院の先生に説明を受けたことを説明したところ、「ああ、4番5番ね。それで牽引を希望なのね」と言われました。いや、希望じゃなくて、総合病院の先生がけん引しましょう、って言ったんよ!
で、先生、母は痺れが辛いって言っているんですけど、痺れは治るんですかね。。。
と聞くと、「痺れは無理です。僕たちは医大の時から痺れは治らない、と教えられているので」だそうです。。。おい、誰も研究していないのかよ!これだけ高齢化社会で、母と同じ症状の人が多くて、誰も研究していないのか!
もうがっくりどころか、母が悲しそうな顔をしているのを、見ていられませんでした。家族は必死です。なぜなら毎日一緒にいて、辛そうな表情や歩けないと泣きそうになっているのを見ているから。高齢だから仕方がない、というのは、これから超高齢化社会になるのに、私たち家族には言い訳にしか聞こえません。医者は免許さえあれば医者なのか?違うと思います。医者は、日々研究していかなければならないと思うのです。医学のことを何もわからない患者が、いかに安心して、そして健康寿命を延ばしていくのか、それを考えてほしいのです。食事療法も運動も大事。痛みや辛い症状の原因を知ることも大事。辛い辛いと言いながら、天国に旅立つ日を待つのは、家族は嫌なのです。
私は決めました!何としても母を元気にしてあげる!明るい笑顔を取り戻してあげる!絶対に!!!
ネットで必死に調べました。今日本で一番の整形外科の名医を探し出すことにしたのです。日本は医学では世界に誇れるお医者様がたくさんいるはず!その中でも今の時代のトップの医者を絶対に探し出す!!
そして、見つけました。ネットは便利です。割と短い時間で見つけることができました。しかし遠い!私が住んでいるところからは、うまく電車を乗り継げたとして、4時間以上かかる距離。飛行機に乗ったとしたら、6時間以上かかるかもしれない。
母は高齢です。今までのヘルニアや狭窄は、ひどくなると手術でしたが、その手術が全身麻酔で手術を受けなくてはいけなかったんだそうです。しかし、徳島大学の西良先生は、内視鏡で手術をすることができる方法を開発したんですね。高齢者は心臓疾患とか、高血圧とか、何かと病気を持っています。だから、全身麻酔の手術にはリスクがある。だから、多くの整形外科の先生は、理学療法で何とか、、、と考えるようです。
しかし、西良先生は、高齢者も快適な生活ができるようにと、内視鏡で手術ができる。処置をしている間に会話ができるから、患者の状況がよくわかるのだそうです。
西良先生のインタビュー記事を読んで、もう、この先生に診てもらうしかない!と思いました。問題は紹介状。私は医者の紹介状は、医者同士が知り合いじゃないとダメなんだと思い込んでいました。調べてみると違いました。自分でかかりつけ医に言って書いてもらうことは、患者の権利なんだそうです。だから、私はすぐに母のかかりつけ医に相談をし、紹介状を書いてもらうことにしたのです。
徳島県はまだ一度も行ったことのない土地。事前調査をしないと不安で仕方がありません。もし、手術ということになった場合は、1か月は滞在する必要があるかもしれないし、交通手段も考えなくてはいけません。
しかし、家族を何とか元気にしたい!こういう思いがあると、色々と道が開けてくるものですし、覚悟もできます。
そして、旅行の下調べは、仕事柄お得意なので、ホテル、レンタカー会社、病院の場所、徳島市までの行き方。料金を調べたり、、、病院のない日は、近くに観光に行けるようにしたら、母がいい気分転換になるかな、とか。リサーチをし始めました。こういうことをしているとき、つくづく、ロケーションコーディネーターをやっていて良かったと思います。
人間は、愛があれば、どんなことも乗り越えられるのです。愛があれば、覚悟もできるし、「できない!」と思っていたこともできるようになるのです。愛の力は絶大です。「できない」と言っているうちは、甘えているのだと思いました。
医者も同じだと思います。医者は彼らが習ってきたことを「当たり前」と思ってしまい、それ以上をしない人が多いように思います。しかし歴史的にみると、家族が医者を動かしていることが多いのです。大泉洋さんが主演の『ディア・ファミリー』もそんな映画です。娘のために人工心臓を作る。医学の知識など何もない父親が娘への絶対的愛によって成し遂げるのです。そこから医学は大きく変わっていく。
愛は、すべてを突き動かし、時にはその業界の常識までも変えてしまう、そして進歩させる。すべては愛なのです。できれば医者が、すべての患者に愛をもって接してほしい、そう思います。痛みや苦しみの感覚は、本人以外にわかりません。だからこそ、家族はその痛みを辛さを何とか和らげたいと思って、必死になるのです。それが愛です。それを忘れている医師が多いような気がしてなりません。
